今回は、陽転思考とは、について話をしていきたいと思います。

陽転思考という言葉は一見すると目新しく見えるかもしれません。

しかし、東洋の思想の基本を知れば当たり前のことで、陽に転じる思考ということを考えるまでもなく、大自然は陰と陽でそもそも成り立っていているという易経の思想で簡単に理解ができます。

言葉の解説だけではなくて、本質的な視点でお話をしていきたいと思います。

陰は陽に転じ、陽は陰に転じる

易経を単なる占いと思っている人もいるかも知れません。

易経は人生や大自然の法則という深遠な思想が説かれた古典であり、生き方、考え方の知恵が詰まったものです。

そのため、中国では帝王学として、人の上に立つ人は易経を学んできました。

この易経では、陰極まりて陽、陽極まりて陰と言います。

例えば、1年のサイクルを見ても、夏至の1年で1番日が長い1日を、陽が一番極まる日とすると、そこから1日ずつ日が短くなっていきます。

つまり、夏至の翌日には、まだ夏はこれからが本番ですが、実はすでに陰が始まっていることになります。

逆に冬至の日が沈んでいる時間が一番長く、そこから少しずつ日が伸びていくように、陰が極まったときから陽が始まります。

陰から陽に転じることを一陽来復といいます。

陽が0になったら次にまた1の陽が生まれるように、大自然は陰と陽がくるくる回るサイクルができています。

東洋では、何千年も前から言われていることなんですね。

ずっと大事にされてきていることなので、陽転思考といっても何も目新しいことではなく、元々ある思想をただ知らないだけなのです。

陽だけにすることも、陰だけにすることもできない

それから中国の思想を勉強すると、自分の中の陽を大事にするには、陰を大事にしないといけない、ということも分かってきます。

例えば、中国に『陰隲録』という袁了凡が書いた本があります。

袁了凡が、人生を変えるために師匠から教わったことを実践した記録が、本になって残されています。

具体的には徳を積むことの大切さが説かれているのですが、徳には2種類あって、陽徳と陰徳があると言われています。

陽徳は、人の見えるところで良いことをし、陰徳は、人が見えないところで徳を積む。

そして、より徳が高いのは陰徳の方だと言われています。

袁了凡は1日にできるだけ徳を積もうと心がけて、実際にそれができたかをノートに記録していきました。

良いことをしたカウントが300、1000,3000と増えていくほど、元々の運命よりも良いものに変わっていった、人生を良い方向に変えていくことができたという記録が残されています。

陰も太極を太くするために活用すればいい

ちなみに、陰と陽はどっちか片方にすることはできない、ということをお話しました。

ということは、陽だけを大事にするということではなく、実は陰も大事にしないといけません。

これを間違うと陽転思考の本質を見失います。

まず、陰と陽の2つに分かれる前は太極があって、太極から陰と陽に分かれていきます。

ですから、そもそも陽だけ選ぶ、陰を避けるというものではないんですね。

陰陽の両方を包含した太極を太くしていきましょう、というのが本来の陰陽の考え方です。

そうすると、一見陰に見えていたものの見え方が変わってくるはずです。

陰は悪いもの、陽は良いもの、と決めつけてしまうと、太極を見失って物事の見方が一面的になってしまいます。

松下幸之助は陰も陽も大事にされていた

陽転思考のようなことは、松下幸之助さんもおっしゃっていて「素直さが大事だよ」「自分は運が良い人間なんだ」という言葉が残されていたり、「社員を雇うときは運が良さそうかどうかで判断をしてた」という逸話もあったりします。

運や素直という考え方を大事にしていて、それが仕事においての成果を出すために大事な要素だと考えていました。

どんな苦しい時でもプラスに考える、陽転思考が大事だ、と言われてるように見えます。

ところが、自分のことを運が良いと言っていた松下幸之助さんは、ご自身では三重苦だったのです。

小学校までしか出ておらず、大学まで一生懸命勉強できていた人ではありませんでした。

それから、体も悪かったので健康にも苦しめられていました。

さらに、子供の頃に家庭が貧しかったのですぐに仕事に行かざるを得なかったのです。

どこかお店の丁稚に入って、その現場の中で商売を学んでいった方です。

陰の極地を知ってる方と言えますよね。

ですが、松下幸之助さんはその三重苦があったからこそ素晴らしい経営者になれた、とご自身でおっしゃっているわけです。

つまり、陰をまったく否定してないんですね。

このように陰自体は悪いものではなく、太極を太くするために活用すると。

そうすると、その分だけ大きな陽を得ることができる、ということです。

陽転思考というと、陰が悪いもので陽がいいもの、と誤解を招きかねない言葉だと思いますので、太極を太くしていく発想が必要だと思います。

陽転思考のような抽象的な言葉には実態はない

また、陽転思考のように抽象的な概念を学ぶときは、注意しなければいけないことがあります。

それは、考え方を学んで役に立ったと勉強することは良いことですが、

大事なのは学んで何が変わったのか

です。

成長することは、何かが変わったということですよね。

ということは、何も変わっていないということは、成長していないということです。

その前提で陽転思考について、理解をしていただくとよいかと思います。

考え方を学ぶときの原則

学んだつもり、できたようになったつもりの頭でっかちのお勉強は、何の役にも立ちません。

考え方や思考法などを学んだ時は、学んだこと自体に自己満足してしまうことがよくありますので、何が変わったか、冷静に現実をしっかりと見る必要があります。

本当の意味で考え方が変わっていれば、絶対に行動に現れてくるはずだ、ということをセットで考えていく必要があります。

自分を変えることが大事

物事には、変えられるものと変えられないものがあります。

自分がいくらがんばっても変えられないものもありますので、変えられるものを変えていく努力をしていきましょう。

まず、変えられるものはコントロールできるものと言えます。

自分が自分の意思でコントロールできるものは、今この瞬間と自分です。

コントロールできないものは、過去と未来です。

過去はもちろんそうですが、未来は今この瞬間にコントロールすることはできません。

それから、他人をコントロールすることもできません。

コントロールできないものを何とかして変えてやろうとする前に、今この瞬間自分がどう行動を変えていけば良いだろうと考えましょう。

陽転思考は使いこなすべきもの

人生を変える、行動を変えるというと、何かものすごく大げさに考えてしまうかもしれません。

しかし、そうではなく、今この瞬間にできることがないかを決めてください。

朝5分早起きする、とかそんなことでもOKです。

どんな小さなことでも良いので、今すぐできることを決めることが大事です。

そして行動を変化させる、ということですね。

これが新しい陽を生みます。

陽転思考を使いこなす、というイメージですね。

そして、その小さな積み重ねが大きな結果、大きな変化に繋がります。

逆に、今すぐできることは何かを決めて行動に移すところまでできないと、学ぶ意味は何もなくなってしまいます。

余計な知識を入れただけ、自分の中の分かったつもりを増やしてしまいます。

それでは逆に、知識が重りになってしまい、行動を鈍らせます。

知らないほうが、フットワークが軽く動ける、なんてことになるわけです。

そのようなムダな学びは、しないほうが良いです。

陽転思考に限った話ではありませんが、このような抽象的な考え方を学ぶ際は、ぜひ今すぐできる行動を決めて、行動に移るところまでをセットにしていきただきたいと思います。